春の初め解説 キャラクター編(ヒイナ)

前回、ご紹介した獣目に続き
今回は第二の重要キャラクター、ヒイナの登場です。

マレビトの出会う場所2 ウェブ用0001
以前、コラージュ作品に出演したヒイナ。




ヒイナはいろいろな方から「可愛い!」と評判でした。
「この子の旅がどうなるか毎回気になった」とも。



これを聞いた時、すごく嬉しかったのです。

なぜかというと
この作品を読んだ人が
ヒイナのことを「可愛い」と思ってくれたら、
その時点で作品の5割方は成功だったからです。




ちなみに残りの5割の内訳は、
「獣目をカッコいいと思えるか」が4割、
「その他」が1割
でした。




テーマや世界観についてあんだけ長ったらしく
解説しといて
「その他」で1割って・・・



いやいや!




主要人物ふたりを好ましいと思ってくれた時点で
テーマは通じているも同じですから。



ことに、ヒイナという
一風かわった子供を「可愛い」と思って
感情移入してくれるというのは
実はけっこう重要なことなのです。




なぜかというと。



ヒイナは、たとえば「名作児童文学」によくあるような
善の象徴のように描かれる子供ではないからです。


大人の作った世界にいやおうなく巻き込まれ、
誰かに守ってもらわなければ生きていけない。
その圧倒的な弱さと、
無力でありながら「大人の世界」をしっかり観察している怖さ

そんな二面性を強く感じさせるキャラです。


“子供の持つ怖さ”は
私の好きなスタンリー・キューブリックの映画にも出てきますので
けっこう影響受けているかもしれません。
特に『シャイニング』の坊やとかね。




世界観についての記事で書いた通り
ヒイナは混沌の中にほうりこまれた、白紙の魂そのものです。



ヒイナは、
「いい人と好ましい人」「悪い人と嫌な人」
これらの、微妙な違いがまだわかっていません。



自分にとって好ましい人が「いい人」であり、
嫌な人はすなわち「悪い人」です。



いちばんはじめに獣目と出会ったとき
ヒイナが見たのは、まさに彼の犯行現場。
なのに、なぜか彼のことを気にいってしまい
その後も何かとくっついていくことになります。


ヒイナが獣目を気にいってしまうのは、
ただ心にピーンと来たから、それだけ。
言葉では説明できない。

この人には何かある――と、直観できづいたのかもしれません。

その後、自分には優しくしてくれたことで
最初に感じていた憧れが確実なものになります。

だから、この物語は
小さな女の子がはじめて大人の男性を好きになる話でもあるわけ。





『春のはじめのころに』では、
「善悪のあいまいさ」から
「何が善で、何が悪なのか?」という疑問を示すことがテーマなのですが
ヒイナが憧れの男性をおいかける旅は
彼女が「善悪のあいまいさ」を学び
「何が悪で、何が善なのか?」という疑問に気付いてゆく過程そのものです。





しかし最後のエピソードで、
ヒイナがまだそのことを“勉強中”だということが明らかになります。
第十八回参照のこと。



ヒイナは、獣目が(当然の報いとして)殺されかかったところを見て
町の支配者が可愛がっていた梟を逃がしてしまいます。


人々はつかまえた罪人をおっぽりだし
大あわてで梟を追いかけ、
そのすきに獣目は逃げ出し、町の外の荒野でヒイナと再会します。



このエピソードで表したかったのは
無垢の持つ可能性と危険でした。

ヒイナはただ、好きな男の人を助けたいからというだけの理由で
町が大騒ぎになることをやってしまうのです。
梟が逃げた後、総督や町の人々はどうなるか、などということは
まるで考えていません。

同時に、獣目が自分にとって英雄であっても
やっていることは盗賊だということも、
彼女は考えることができないのです。


このとき、ヒイナが梟の鳥かごを壊すのに使ったのは、
前に獣目からもらったナイフでした。

ちなみに“自分が助けた中で、もっとも弱く小さいものによって救われる”というのは
民話などによくあります。
(芥川龍之介の“蜘蛛の糸”もこのパターン)



さて、ヒイナについての解説
予想よりも長くなりそうなので
ここからさきは次回にまわします。次もよろしく☆

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プロフィール

探究者ニキ

Author:探究者ニキ
安藤ニキ
神奈川県横浜市生まれ、
慶応義塾大学文学部哲学科卒業の画家。
油彩・版画・ドローイングなど表現方法はさまざま。たまーに漫画も描きます。
作品のお問い合わせはnikiあっとando-kobo.jpへお願いいたします。

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