『われ、深き淵へ』制作秘話5・キャラクター(ハネリ編)

『われ、深き淵へ』制作秘話キャラクターの巻、
今回はⅢ ハネリです。

ハネリ13.4.6.

今までにこういうタイプのキャラは描いたことがなかったので
私にとっても軽く挑戦でした。



なにが挑戦かって、
年頃のかわいい女の子を描いたことがなかったんですよ(笑)。

今回の劇画のストーリーが決まった時点で
はじめて気がついた。
そういえば油彩オンリー時代から
女の子を描くことってすごく少なかったなぁ・・と回想。



いや、ヒイナは一応女の子だけど
ちょっと違うでしょ?笑
ここで言う「年頃のかわいい女の子」てのとは。

ヒイナ⑬.4.6用
(はじめての劇画『春のはじめのころに』
出演してた時のヒイナ。
今回もちょこちょこ出てました)


目鼻が点だし・・・
年齢ひとケタにしか見えないし・・・
(設定上の上限は11歳だけど)




女性アーティストでめずらしいって言われますよ。
人物がメインモチーフなのに
男性中心に描くって。

で、劇画の話。

今回でも主人公は男性ですが
主要人物として、女の子であるハネリが出てきました。
年齢設定は17~18歳くらい。

彼女が体現していたのは
“悪の機構のなかに組み込まれてしまった弱い人間”です。

そうねぇ、リード隊長と部長は
まちがいなく“強者の悪”。
ハネリはそんな強者の犠牲になりながら、
彼らに加担させられてしまう弱者です。


この劇画にでてきた思想警察や牢獄が
実際にあるように、
彼女のような立場にいた人も実際に数限りなくいます。

弱い者同士が
自分の身を守るためにお互いを監視したり、密告したりね。

それを断固、拒否できる人というのは
そうそういるもんじゃありません。
これ書いている私だって自信ないですよ、全然(苦笑)。


心弱い人間が、こういう状況で生き延びようとすれば
さしあたって力のある者の言うことに従うしかないのです。

ここではひとりの人の中に
加害と被害が同居しています。
そうやってなんとかしのいだものの
心の中のわだかまりをずっと抱えて生きている――


そんな人の象徴としてハネリを描いてみました。


ここで私が問題にしたのは
「心のやましさ」です。

やましさなんて、実際の効果を考えたら
意味のない感情かもしれない。

私も昔はそう思っていました。
まだ子供で、単純だったんですね(笑)。
人間について考えるのに、
理想ばかりが先走っていた頃の話です。


でも最近になって
「やましさを感じる人」と
「感じない人」では
ドえらい違いなんじゃないか?
――と思うようになりました。

本人が変わるきっかけは、
やましさを感じている人の方が確率高いでしょうし。(たぶんね)


思想警察の面々を描いた時と同じように
彼らにつかまっている被害者・ハネリの心にも
「やましさ」が生まれます。

彼女の場合、
ペトとの出会いによって
それがだんだん大きくなっていくんですね。


ペトは、正体が人間を超えたものであるから
そんな彼女の心がはじめから分かっていた。
だからこそ、彼女にだけ正体を明かすんです。


深淵13.4.6用
第六回より)


ペトの正体を見てしまったハネリは
彼が天使だといいはったおかげで
結果的には解放されることができました。

「頭がおかしくなった」とみなされて解放される、というのは
古い奇跡譚とはだいぶ違う救いの形で
現代的というか、ある意味皮肉でもあります。



やがて、かつてペトがいた広場で
ハネリはふたたび彼の姿を見ます。

実は不死の存在であったペトは、
殺された後でも復活したんですね。

しかしここで
ペトは一瞬、彼女の前に現れるだけです。
次の瞬間には人ごみの中に消えていってしまうのです。

このラストシーンもなかなか意外だったみたい。
「天使の姿で出てくるのかと思った」という予測が多かったようです。


これはハネリの“弱さ”が
そのまま受け入れられるものではないからです。

やむをえずであっても
悪の側に加担していたわけで――
「仕方がなかったから」「自分も被害者だから」という理由で
何ごともなかったかのように
平然と生きていくことはできないのです。
できないし、やっていいことでもない。



私がこういうシビアな考えを盛り込んだのは
やっぱり、神の領域と人間の領域は違うから

私たちが人間同士である以上
ほかの人間への罪はそのままにしておいてはいけない。
本人が許さない限りね。

すべてを許す存在があるとしたら
それはもう、人間ではありえない。
そして、人間の領域では
許してはいけないことだってあるんです。
 



ペト(実はアッシュエル)は天上の存在だから
許してもいいんじゃないか?とも考えられますが――

もしこれが彼でなかったら、そうはいかない。
そしてハネリは今後も、人間の世界で生きていく身です。



ペトに出会ったことで
ハネリはいわば、少し目覚めたのです。

よみがえったペトが一瞬だけあらわれるのは
その目覚めを忘れないで生きていくんだよ、という
無言のメッセージですね。

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プロフィール

探究者ニキ

Author:探究者ニキ
安藤ニキ
神奈川県横浜市生まれ、
慶応義塾大学文学部哲学科卒業の画家。
油彩・版画・ドローイングなど表現方法はさまざま。たまーに漫画も描きます。
作品のお問い合わせはnikiあっとando-kobo.jpへお願いいたします。

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