グリム童話のこと 2

グリム兄弟によって編纂された『グリム童話』は
第七版まで出ていて
今私が持っている文庫本も第七版の訳です。


初版から版を重ねるごとに
内容の改定・話の追加などがあり
第七版で決定版となったそうです。



前回の記事では、私の持っている『グリム童話集』が
完訳版であり
流布している話にはない、恐ろしい場面や残酷な場面がある――
ということを書きました。


私の母は『完訳版』と書いてあるからには
それなりの意味があるに違いない、と思って
子供に与えたんだそうです。

その子供はありのままのおとぎ話に
恐ろしいながらもすっかり魅了され
期待をはるかに超えて、しっかり意味を汲み取りました。


しかし、それでも第七版です。
版を重ねているちに変えられた設定がたくさんあるんです。

『完訳版』と銘打っていても
はじめの頃とくらべたら
まだ穏やかになっているということなんですよね。



「本当は恐ろしいグリム童話」が
ベストセラーになったあと
ちょっとした“グリム童話ブーム”みたいな現象が起こっていました。
今でも脈々と続いているようですね。


その中に、初版グリム童話についての本もありました。

完訳版ではなく、初版。


初版にはそのまま出ていて
出た後で「これはまずい」という内容の話があり
そういうものは設定を変えられたとのことです。

私はそのとき、初版についての知識はなかったので
読んでみたら
『完訳版』にも書いていなかったことがあって驚きました。


「白雪姫」で主人公を殺そうとする女王は
最初は継母ではなく、実の母親だったとか。


あと、これは最近ですが。
「封印されたグリム童話」と言う本がありました。
(注・記憶を頼りに書いているのでこのとおりではないかも)

文庫本バージョンでは「血みどろグリム童話」・・・

・・・なんか、えらく猟奇的なタイトルになっちゃってますが
内容は大まじめで深いです。


これは、「版を重ねるうちに穏やかにされた童話の、本当の話」
ではなく
「穏やかにしようもないので削除された童話」を集めていました。

読んでみると実際、
娯楽性に欠けるばかりか
こういう童話がなぜ受け継がれていたのか
困惑するようなものばかりです。


たとえば「子供たちの屠殺ごっこ」。

これは、豚の屠殺を子供たちがまねして
仲間の一人を殺してしまうという話です。
第二版以降で削除されたらしいです。

あえて意味を見出すなら
善悪を知らない存在のおそろしさ、でしょうか。

子供は善悪を知らないがゆえに
平気で残酷なことをしてしまうこともある、
だから大人がしっかり教えないといけない――と。

物語の中では
子供たちのしわざに驚いた大人たちも
子供たちを罰することがないのです。

この点もまた「こういうことをしてはいけません」という
教訓なのかもしれません。



また、長い話の断片とおぼしき話もあります。
似たような話で、ハッピーエンドに終わっているものが
残されたグリム童話にあったりしますから。




ただね、私が「あれ?」と思ったことが。

封印されたグリム童話の本は
「削除された話」を集めているはずなのですが、
私が持っている本にはちゃんと入っている話もあるんですよ。
ふたつぐらい。

片方は忘れてしまったので(笑)
覚えている方を書きます。


テーブルとロバと、袋に入った棍棒の話。


仕立屋の3人の息子が
飼っているヤギのせいで家を追い出される羽目になり。

長男は魔法のテーブル(いつでも食事が出てくる)、
次男はロバ(金貨を吐き出す)、
三男は袋に入った棍棒(持ち主が命じると人を殴る)を手に入れます。

で、長男と二男は途中で泊まった宿屋の主人に
テーブルとロバを盗まれてしまう。

ところが三男は盗まれる瞬間に
棍棒に命じて、主人をボコボコにさせて
見事、宝物を取り戻して仕返しします。
それで3人そろって家に帰りましたとさ――

と言うお話。

かなりはしょって書きましたが、だいたいこんなところです。
(例のヤギは仕立屋に追い出されて
 行方知れずになったとのこと)


まあ、勧善懲悪の話とはいえ
けっこう仕返しのやり方があらっぽかったりしますが
削除されるほどのものだったのかな?という気はします。

だって、この基準で行ったら
もっとすごい話がいくらでも残っているんですから。
人食いとか処刑とか。


私の持っているグリム童話集には
削除されたはずがしっかり入っていますし。

もしかしたら、版にも何種類かあったのかなと思いますが
このナゾはちょっとわかりません。



完訳版のグリム童話には
今まで書いてきたように、人間の暗い面を如実に描くシーンが
たくさんあります。
しかしそれと同時に
たくまざるユーモアと、別世界のように美しいシーンも多いのです。


それはようするに
人間の複雑さをそのままあらわしているのではないでしょうか。
また、そういう話を受け継いできた
一般庶民の気持ちの反映でもあるでしょう。


「灰かぶり(シンデレラ)」や「白雪姫」もまた
勧善懲悪の物語ですが、
悪の懲らしめ方がたいそう過激です。

(「灰かぶり」のラストでは
 二人の姉が鳩に目をつつかれて、盲目になってしまいます)

いくら優しさを説かれても
やっぱりいじめられた側としては
すんなりと許せないよ――という思いが
受け継いできた人々の間にあったような気がします。

民間伝承って、結局は人間を描いているんですね。
グリムを読むと、そのことが強く伝わってきます。
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