ご報告4 とりわけ多かった感想の巻

人形を持った少女 13.7.290001
【“人形を持った少女”  2013年 油彩 オリジナルの額入り】


本日の記事は「とりわけ多かった感想」についてです。


それは「なつかしい」。

これは今までに何回か、いただいたことのある感想です。
私にとっては嬉しいと同時に、
すごく不思議な感じのする感想でした。

私でなくても不思議になるかもしれない。



自分がただ、心に浮かぶものを
描いているだけなのに

「どこかで見たような光景に思える」
「ふるさとの風景を思い出した」
「昔見た夢とまったく同じ光景だった」


こういう感想がでてくるのですから。



私はノスタルジーの画家ではないし
“ノスタルジックに感じさせる絵画技法”なんて、もちろん知りません。
(つか、そんなのあるのかな/笑)

にもかかわらず。
この感想は具象でも、抽象=共感覚作品でも
共通してありました。



来てくださる方々の感想は
私にとってはどれも、とても面白いんです。
自分でも気づいていなかったことを気付いたり
忘れていたことを思い出したりしますから。


今回、とりわけ「なつかしい」という
感想が多かったことは
私も自分自身のことを思い出すきっかけになりました。


なぜ、私の絵が「なつかしさ」を喚起するのか。

このナゾはいまでもナゾのままなのですけど、
「なつかしい」という感情には私も特別の思い入れがあります。



私は2007年6月ごろから
自分のトラウマになっていた恐怖画像を
もう一度見直すことにしました。


何度かこのブログで書いてきましたが――

印象に残った画像が
頭の中にストックされてしまう私は、
たとえば戦争の写真とか、個人的なトラウマになってしまうのです。

実際、うつ病の原因の何割かはそれらの写真でした。


だから、何年間か
意識的にそういう画像を避けていたのです。


でも、忘れることはできなかったし
恐怖だってちっとも軽くなってくれませんでした。



で。

アスペルガーと診断されたのをいい機会に
(映像への感受性が強いと分かったから)
決意しましたよ。ええ。


それだったらいっそ、その恐怖と対面してしまえと。
そーっと見ていたけど、
この際、思いっきり見てしまえと。

視野の端っこでなく、眼球の真ん中でね。


恐怖は避けるのでなく、
作品にして発散するべしと。


それで再会しました。
広島と長崎の写真からはじまりました。
私にとってダントツで最悪の記憶なので
それを一番最初にしたんです。

ほかにもいろいろな土地、いろいろな時代の写真がありました。



記憶の中に刻み込まれていた
多くの写真と
頭の外の世界でもういちど出会ったとき

なぜか強烈な“なつかしさ”を感じたのです。



それは、自分が子供のころに怖かったものと
再会した“なつかしさ”だけではなかったようです。

まるでその写真が
自分の生まれ故郷の写真のように感じたんですよ。


私の生まれ故郷は横浜だし
それを間違えるほど錯乱してはいません(笑)。
でも、なつかしいと感じた。



しかし、考えてみたら
あながち私の感覚が錯乱しているためでもないようで。

ある意味、
そこに写し出された光景は
私にとっての原風景だったわけですから。

幼いころから、大人になっても
拒否しつつもずっと心の中に残り続け、
どんなに忘れようとしても決して忘れられないことが
自分でも分かっている。

それはなんとも奇妙な、心のふるさとなのかもしれません。


時間も空間もさまざまな写真のイメージが
頭の中で熟成されて
いつしかひとつの、架空の“グラウンド・ゼロ”になる。


こんな事情があるので
私の描く世界観には、きっとこの
“心のふるさと”が強く反映されているに
違いないのです。
作品全般の土台になっているのでしょう。



しかしそれは
私にとってのなつかしさであって
ほかの人が見たら、どう思うかは別の話のはず。

また、実際に見た写真が
イメージの源泉にあっても
描いた作品は、元の写真とはまったく違ったものになっています。


この、きわめて個人的なはずの世界を見て
何人もの人が同じく「なつかしい」と感じる。


私の持っている原風景が、
どうやらほかの人たちの原風景とも
共通したところがあるらしい
――ということのようです。

写真が切り取った
特定の場所、特定の時間をはるかに飛び越えて。

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プロフィール

探究者ニキ

Author:探究者ニキ
安藤ニキ
神奈川県横浜市生まれ、
慶応義塾大学文学部哲学科卒業の画家。
油彩・版画・ドローイングなど表現方法はさまざま。たまーに漫画も描きます。
作品のお問い合わせはnikiあっとando-kobo.jpへお願いいたします。

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