奥野ビル306号室物語

銀座・奥野ビルにおいでになった方は
306号室をご覧になるかもしれません。


でも奥野ビルといえば
まるで立体迷路なので
案外、行き慣れた方でも知らない、というパターンも
もしかしたら多いのでしょうか。

スダ1 145120001




現在ではほぼ完全に空きスペースになっている
この306号室ですが
入口横に「スダ美容室」の写真がかかっています。

スダ4 145120001



かつて、奥野ビルの306号室に
「スダ美容室」という美容室がありました。
昭和初期に一人の女性がここに入居、
美容室を開いたのです。

戦中、戦後と営業を続け
昭和60年代に廃業。

その後はその女性が住居として
住まい続け、
2009年に彼女がなくなって空家になったそうです。



スダ2 145120001

現在は壁もはがれ、電気もなくなったまま、
かつての様子を物語るものはありません。

あえてこのような状態から“復元”はしない、
というスタンスの元
「奥野ビル306号室プロジェクト」が
同室の保存を手がけているところです。




私はこの部屋の存在を知っていらい、
奥野ビルに行った時はたいてい306号室に行くことにしています。

部屋が空いていない時もありますが
運が良ければ中に入ることができます。


スダ3 145120001



松本清張の小説に
『絢爛たる流離』というのがあります。

短編があつまって長編になっているという
映画で言えばオムニバスのような形式で
私はこの作品が大好きなのです。


昭和初期に九州の富豪が
娘にダイヤモンドの指輪を買い与えたのが
ことの発端。

太平洋戦争中、戦後、学生運動期、高度経済成長期と
ダイヤの指輪はいろいろな人々の間を転々とし
その中にさまざまなドラマが展開していきます。




私が奥野ビル306号室のことを知って
まっさきに思い出したのがこの小説でした。

清張が書いたダイヤの指輪のように、
この美容室は多くの人の人生と
かかわってきたにちがいありませんから。




昭和初期から現代までの間に
一体何人の人がスダ美容室で髪を整えたのでしょうか。

その中には常連さんもいたでしょうし
一度だけ来た人もいたでしょう。

晴れの舞台のために来た人もいれば
一生をかけた勝負のために来た人もいたでしょう。


もしかしたら、その中には
日本の歴史にかかわる役割を演じていた人も
いたかもしれませんし、
大きな事件と関係があった人も
いたかもしれません。


306号室に行くたびに
いくら考えても飽きないですね、これは。
小説を読みたくなります。


ひとつの美容室をめぐる、
昭和の女たちの物語・・・

(昔は美容室といえば女性でしょうから)


もしかしたら、
作家の山崎洋子さんだったら
このモチーフをネタに
かなり面白い小説を書けるんじゃないかと思ったりします。






※付記1

「銀座奥野ビル306号室プロジェクト」のHPはこちら。
http://306project.web.fc2.com/index.htm


※付記2

306号室の写真を撮ったら
なぜかどれもブレていました。
ちゃんと手ブレしないように撮ったはずなのですけどねぇ。

テーマ : 東京23区
ジャンル : 地域情報

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プロフィール

探究者ニキ

Author:探究者ニキ
安藤ニキ
神奈川県横浜市生まれ、
慶応義塾大学文学部哲学科卒業の画家。
油彩・版画・ドローイングなど表現方法はさまざま。たまーに漫画も描きます。
作品のお問い合わせはnikiあっとando-kobo.jpへお願いいたします。

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