山崎洋子さんの自伝から――古き悪しき時代

山崎洋子さんの自伝から、今回もやります。

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ねえみなさん、
人が信じたいことってあると思いませんか?

あたかも真実のように語られてはいるけど、
そうではない現実の方が目につく――ということ。

たとえばこんな↓




「昔はよかった」
「過酷な環境であればあるほど、人の心は美しくなる」


山崎洋子さんの自伝を読むと、
こういう神話がいかにもろいかを痛感させられますよ。


昔はよかった、とよく言われます。

貧しくてもみんなが助け合っていた。
となり近所のことにも気を配っていて、何かあればすぐにだれかが助けに入った。

こんなことがよく言われます。

でも洋子さんの自伝に出てくる「昔」は、
語られている「昔」とは大きく違うのです。


洋子さんが幼いころ、祖父に灸をすえられたことが書いてあります。
ひどいやけどになって今でも跡が残っていると。

「(・・・)ところが、当時は子供の人権などほとんど無視されていた。
 というか、よその家がすることに、みな口を挟まなかった。
 この町の人々にとって、それは暗黙のルールだったのかもしれない。
 この時も、誰かが止めるどころか、近所の人々が大勢集まり、
 イベントでも観るかのようにこの光景を眺めていた。」



何やら寺山修司の映画にでも出てきそうなシーンです。

洋子さんは「祖父母にひどいことをされた記憶はこれだけ」
と書いていますが、
私にはこのシーンがあまりに象徴的に思えてならない


洋子さんはその後の子供時代で
継母には虐待されこき使われ、
実母にも愛されないという道をたどるのですが。

そこに誰かが介入して助けてくれたという記述が
ほとんど見当たらないのです。



継母の秋枝さんのしうちがあまりにひどいので
母方のお祖母さんが「家出」を画策して
洋子さんが実母の元にいけるようにした。このくらい。

それもずいぶんと遅くなってから、洋子さんが14歳になってからです。



この自伝には書かれていませんが、
洋子さんは継母(だったと思うけど)によって
芸者に売られかけたこともあるそうです。

そして間借り生活をしていた家の住人たちのいやらしさ。

家事一切を洋子さんに押し付け、洋子さんを不良に仕立て上げ、
ののしり、あとが残らないようにずるがしこく虐める継母。

こんなことをおそらく知っていながら、
住人達はいっしょになっていじめたんだそうです。



「昔はよかった」
「昔は人情があった」って
本当にそうなのでしょうか?

私には洋子さんのケースが特殊だとは、
とうてい思えないのですが。

子供の虐待が問題になっていますけど、
昔はそれが「なかった」のではなくて
「問題になっていなかった」だけではないでしょうか。

親は子供を売っていたじゃありませんか。
そうじゃありませんか。

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