「カンペキな方法」を信じないで

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先日の講演で私が新たに喋ったことの中に
「特定の教育法をカンペキだと信じ込まないでほしい」
というのがあります。



早い話が
「自然の中で子供を遊ばせる」なんて
一見いいことずくめのようですが、
自閉症の中には感覚過敏がひどくて
泥や水に触れない子もいるわけです。

そういう子たちに無理にやらせたところで
逆効果ではないでしょうか。





なぜこんなことを言ったかというと、
私がこれでエライ目にあったから




まだ年齢ひとケタだったころ
父がシュタイナー教育に夢中になりました。
ちなみに今でも家に本が何冊かあります。


で、父いわくシュタイナー教育では
子供に“色をいっぱい使って”“おおらかな太い線で”
絵を描かせることを理想とするんだそうです。




ところが私はボールペンで細密画みたいな絵を描くのが
大好きでした。
描いていると楽しくて、いつまでも熱中していました。


父はそれを見て
これはまずい!!!と思ったらしく
ある日突然私に「ボールペン禁止令」を出しました。

「ものには輪郭線なんかない。だから輪郭線を使ってはいけない。
どうしても線を使いたければ色鉛筆で描くように」と。
これは私の記憶に残っている父の指導そのままです。


まだ親の言うことが絶対の年齢でしたし
「言われたことが“絶対”になってしまう」という
自閉スペクトラム特有の受け取り方(らしい)
をしたため
素直に従いました。


でも言うまでもないことですが、
色鉛筆でボールペンみたいに細かくなんか描けませんでした。
芯はすぐに丸くなるから
描きたいように描けないし、
描いた絵もぜんぜん好きになれないしね。


また、絵本や図鑑の絵を模写するのにも
熱中していたのですが、それもダメ。


絵ではないですが、見たいアニメも多くが禁止されました。




私にしては大変な災難ですよ。

だってそうでしょう、
自分の好きなことをいきなりやめろと言われたんですから。


絵を描くことは、不安の多かった幼少期の私にとって
精神安定剤かつ唯一の遊びでした。
ところがその“最後の逃げ場”だった絵ですら
親の顔色をうかがいながらになったわけ。


「これを描いたらお父さんに叱られないか」
こういう心配ばかりしながら絵を描いていました。




本格的な現場でやれば、また違っていたのかもしれない。
でも私は自分で調べていないのです。
もはや「シュタイナー」の単語を見るだけで胃がおかしくなるので・・・




あっ。
ちなみに今は思いっきり自由に描いてます。
銅版画&マンガ原稿という
モノクロ・細密描写の権化のような技法で

あきらめたのか納得したのか
父も何も言いません(笑)。





この経験から親御さん方に言いたいんですけど、
どんな偉い学者先生の説であっても
あなたの子供に合っているかどうかは別問題なのです。




親が特定の教育方法に入れこんでしまうのは
いろいろな意味で危ないんです。

もし子供の個性がそれに合っていなかった場合
子供に逃げ場がなくなってしまう。

子供は親を喜ばせたいから
自分にとって苦痛でしかないことも一生懸命
やろうとする。
親にほめられたい一心で。

それでどんどん、本来の性向とは違う方向に行ってしまうのです。



子供の個性よりもその教育法の方が正しい!
だから本来と違っていても従う方がいい!とするなら
もはやそれはカルトでしょう。


たとえ理論がカルトでなくとも、
信じる方がカルト的に信じてしまっています。




前に聞いた話ですが、
ある子供が学校に持ってきた弁当がまっ黒だったと。

何ごとかと先生がのぞいてみれば、
黒米・黒ゴマ・その他黒いものばかりぎっしり入っている。
親がいわゆる“自然食”にハマっていて
子供の弁当をそれに忠実に従って作ったんですと。


この親御さんの熱意は分かる。
分かりますけど、
まっ黒けの弁当をクラスメートの前で開けさせられた子供はどうか。
黒米なんて見慣れている子の方が少ないんだし
「あいつの弁当きめえ」となるんじゃないですかね。





そもそも“断言”する人は危ないと
私は思っています。

この方法で行けばすべての子供が理想的に育つ!と
豪語する教育学者や実践家、
農業さえやればすべての問題児がまともになる!と
断言するNPO、
子供は絶対に西洋医学にかからせるな!と
言ってはばからない東洋医学推奨者、

こういうのは最初から疑ってかかるぐらいで
ちょうどいいでしょう。




カルトにはまる、あるいはカルト的に熱中することは
自分に自信がない人でも
逆に自信があり過ぎる人でも
同じくらいの危険性があると思います。

自信がない人は他人の言葉を盲信しやすいし
自信過剰な人は
自分の考えが間違っているわけないと思ってしまうから。



問題意識のある親御さんや
子供に良いことを熱心に追い求める親御さんほど
このワナにははまりやすいのです。
なにとぞ気をつけてくださいね。

テーマ : 発達障害 - ジャンル : 心と身体

コメント

これもとても共感します

とても
大切な感覚だと 思います。ありがとう

Re: これもとても共感します

香菜さま

どういたしまして。この記事ね(苦笑)。なにせ自分自身の体験があるし
けっこう似たような轍を踏む人が多いような話を聴いたので。
反響が大きかったので書いてよかったです。

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