原爆を描くって

8月6日のヒロシマ・デーということで
ちょっぴりそれ関連のお話を。


原爆の図6.90001

丸木位里・俊「原爆の図」第八部「救出」より。

実は私、この青年像が大好きなんですわ!!



「原爆の図」にしてはめずらしく造作的に美しい。
化け物みたいになってしまった人の方が多いですからね。


あ、でもこの青年にかぎらず
あの作品は好きです。
どっちかというと俊さん(奥さんの方)の色の強い方が
好きかも知れない。

※二人の政治的立場については不問。
  私が影響を受けたのは絵だけなので。



ちなみに俊さんの影響がもろに出ていた頃に
描いたのがこれ。

安藤ニキ 【わが現代の天使】 2010年7月 油彩F50号







私が丸木位里さん・俊さんの「原爆の図」を好きなのは
あれが人体表現のひとつの究極を極めていると
思っているからです。



原爆をテーマにした作品なんて
それこそ腐るほどあるのに
なぜあの作品、さらにその一部だけが
とりわけ好きなのか。


それはテーマと関係なく
画面として魅かれるからですよ。

もちろんテーマも大きいですけど、
テーマだけが問題だったら
原爆の絵ならなんでもいいということになりますからね。





ところがその「テーマだけが問題」という作品の
なんと多いことかしら。



原爆を描くというのは
本来なら大変な想像力と力量を必要とするはずなのに、
原爆ドーム描いてハト飛ばしときゃ
それで事足れりとしている作品のいかに多いことか。




いやしくも画家(アーティスト)であるなら
もうちょっと考えてもいいんじゃないでしょうか。


テーマの重さに対して、
作者自身の影がすごくうすいんです。


作者自身がそのテーマで
心の底から震えあがったことが一度でもあったのかどうか。
すごく疑わしいんですよね。



昔、慶應で漢詩を学んだとき
“よくない例”として
「病なくして呻吟する」という言葉がありましたが、
まさにそれが当てはまりそうな作品がよくあります。


なんて言うか、道徳の教科書へのゴマスリにしか
なっていないと言いますか。





私は元々、
真の画家ならわかりやすいモチーフを可能な限り入れずに
原爆を表現してみるべしと考えております。
(いや別に原爆に限りません、
戦争でも自然破壊でも原発でもいいですよ。)

私自身、原爆の写真が長年トラウマ化していますけど
自分自身にその律を課しています。




よく“社会的絵画”の例として
ピカソの「ゲルニカ」が持ち出されますけど、
あれはピカソの有無を言わさぬ実力があって
初めて成立した傑作であって、

そこらの画家がおいそれと真似できるレベルじゃないでしょう。



ちなみに原爆を描いた作品で
ほかに心の底から震撼したものと言えば
立島夕子さんの「爆心地のマリア」!


yuukosan50001_1.jpg



立島さんの場合は
作者自身が抱いた恐怖がびんびん伝わってきて
だからこそ忘れられない作品となりえているのです。




大きなテーマに関心を持つのは普通のことだし
なんら問題ではないと思いますが、
今いちど「現在の自分にそれを表現しきれるか」
「自分にとって本当に“リアルな”実感のあるテーマか」を
考えてみるのも
大切じゃないでしょうか。


今回はめずらしく、糞生意気なことを書かせてもらっちゃいました。

テーマ : art・芸術・美術
ジャンル : 学問・文化・芸術

コメントの投稿

非公開コメント

No title

「テーマだけが問題」という作品>
ピカソの「ゲルニカ」、有無を言わさぬ実力>

こ~ゆ~話、自分も友人と、映画とか、漫画とかの話をする時によくしますよ!

映画とかにも、「むずかしい、りっぱなテーマでえいがをつくりました!すごいでしょ?」
で終わってるやつ、ありますよねぇ・・・

自分はそういう残念なのを見ると、「エンターテイメントから逃げている」と思いますねぇ。

Re: No title

作品としておもしろくないもの、質が高いとは思えないもの、けっこうあると思います。
あとやたらと「感動」を訴えかけてくるものとか。これも苦手。
作者自身がどれほど深く掘り下げて考えたのか・・・
テーマの重大さに対して、中で描かれている人間があまりに単純化されているんじゃないか?
と感じる作品が多いです(^_^;)
NIKI 安藤ニキ・ホームページへ
プロフィール

探究者ニキ

Author:探究者ニキ
安藤ニキ
神奈川県横浜市生まれ、
慶応義塾大学文学部哲学科卒業の画家。
油彩・版画・ドローイングなど表現方法はさまざま。たまーに漫画も描きます。
作品のお問い合わせはnikiあっとando-kobo.jpへお願いいたします。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
リンク
QRコード
QR